医療レーザー脱毛の機械はどれも同じではなく、それぞれ特徴があります。おすすめの脱毛機械といえば、ルミナス社のライトシェアデュエットやキャンデラ社のジェントルマックスプロが有名ですが、他にも注目の集まる機種があります。
目次
主な医療脱毛機械まとめ
日本でレーザー脱毛が行われるようになったのは1997年頃ですが、海外ではそれ以前からレーザー脱毛の研究が進められてきました。レーザー脱毛械の開発をリードしてきたのは主にイスラエルのルミナス社(LUMENIS)やアメリカのキャンデラ社(CANDELA)といった企業であり、レーザー脱毛機は今もなお、脱毛効果と安全性を高めるために進化を続けています。現在の代表的なレーザーと脱毛機械は、次のようなものです。
レーザーの種類 | 機械名 |
---|---|
ヤグレーザー | ジェントルヤグ、クールグライド、ジェネシス |
ダイオードレーザー | ソプラノ、メディオスターNeXT、ハヤブサ、ライトシェアデュエット |
アレキサンドライトレーザー | アリオン、ジェントルレーズ |
アレキサンドライトレーザー+ヤグレーザー (ハイブリッド型) |
エリート、ジェントルマックスプロ |
ヤグレーザーとは
1,064nmと比較的長い波長を持つため、肌の深いところにあるムダ毛に効果を発揮するレーザーです。表皮のメラニンに左右されにくいため、地黒肌や日焼けした肌にも使用できますし、レーザーが反応しにくい細い毛に対しても効果的です。
毛根が皮下の深いところにある毛、男性の濃い髭の脱毛にも向いています。
ヤグレーザーのベストな使い方は、広範囲な部位はダイオードレーザー、アレキサンドライトレーザーで照射し、肌や毛の状態に応じてこのヤグレーザーを併用することです。他のレーザーでは脱毛できない濃い肌色に対応したりやけどリスクを抑えたりするために、クリニックではヤグレーザーも導入しておくべきです。また、皮膚の深くまでエネルギーを到達できるためうなじや背中など硬毛化した部位においても活躍します。
ダイオードレーザーとは
メラニンだけに選択的に反応するレーザーの作用を効果的に発揮して、肌ダメージの少ない脱毛を行うことができるのがダイオードレーザーです。
波長の長さは約800nm。搭載機にもよりますが、他のレーザーと比べると照射時の痛みが少なく、照射範囲(スポットサイズ)が広くて施術スピードの速いタイプの機械が開発されています。
患者さんにとって効率的に脱毛をすすめることができるのは大きなメリットであり、近年では多くのクリニックがこのダイオードレーザーを主力として医療脱毛を行っています。
アレキサンドライトレーザーとは
アレキサンドライトレーザーは、メラニンに効果的に吸収されて毛根組織にダメージを与えることができるので、高い脱毛効果が得られます。
それだけでなく、波長の長さが755nmと比較的浅いために、表皮にあるシミやあざ、ニキビ跡などの色素沈着を改善する効果も期待されています。そのため「美肌レーザー」と言っても過言ではなく、肌のブツブツが気になっている人はもちろん、肌トラブルがない人も試してみたくなるレーザーです。
アレキサンドライトレーザーの照射時はやや強めの痛みを伴いますが、軽減するための冷却装置がほとんどの機械に付いています。
ハイブリッド型とは
脱毛効果の高い医療用レーザーは上記の3種類ですが、これらを複数搭載したハイブリッド型の脱毛機械もあります。異なるレーザーの機能を兼ね備えたハイブリッド型は、毛質が異なる部位も一台で対応できるのがメリットです。
なかには、脱毛のほかにフェイシャルなどの美容皮膚科の治療にも使えるタイプがあります。
ソプラノ(ダイオードレーザー)
イスラエルのアルマレーザーズ社(Alma Lasers)のソプラノは、通常の医療レーザーとはムダ毛へのアプローチが異なります。通常ならメラニン(黒い色素部分)をターゲットにして毛根を集中的にレーザーで破壊していくのですが、ソプラノの場合は毛包(毛を包んでいる組織)全体に熱を溜めてダメージを与えることで脱毛効果をあげていきます。
ソプラノの特徴は、どんな色のムダ毛でも処理できること。メラニンの有無に左右されないので、産毛や細い毛だけでなく、通常はレーザー脱毛できないとされる白髪や金髪までも、黒い毛と同様に脱毛できます。日焼けした肌(メラニンが多い肌)に照射した場合も、やけどリスクの心配はほとんどありません。
※毛根にアプローチする全て医療脱毛機に共通して言えるのが、黒い色素に反応するレーザのため、白髪の脱毛は難しい、ということです。白髪の脱毛をしたい方は絶縁針脱毛だけです。
また、毛根を集中攻撃する普通のレーザーと違い、毛包全体に熱エネルギーを当てるため痛みも分散されるなど、肌へのダメージが最小ですむメリットがあると言われます。
しかし、主流のレーザーのメカニズムから考えると、痛みや火傷のリスクがほぼ無いということは、脱毛効果は比較的劣るリスクが考えられます。肌や毛のメラニン色素に反応することがなく照射の影響がマイルドなので、その分、施術が長くなり脱毛料金が高額になりやすいデメリットもあります。
現在は、高い効果を追求した新しい脱毛機械がどんどん出てきていることもあって、ソプラノを取り扱っているクリニックはあまり多くないと言えるでしょう。
メディオスターNeXT(ダイオードレーザー)
ドイツのアスクレピオン社(Asclepion)のメディオスターNeXTは、毛根と表皮との間に存在すると言われるバルジ領域をメインターゲットとしています。バルジ領域と毛包全体の2つを狙ってダイオードレーザーを照射し、蓄熱式によりジワジワとダメージを与えることによって脱毛効果が期待できます。より深い場所にある毛根にレーザーを当てるよりも、痛みを抑えることができるとされています。
また、メディオスターNeXTのダイオードレーザーは、ターゲットをバルジ領域に絞っているためメラニン色素に反応しにくく、日焼けした肌や色素沈着のあるVIOへの照射も可能です 。
さらに、照射は肌の上を滑らせるようにして行うため、施術スピードがかなり速いです。照射直後に冷却装置が作動して肌をクールダウンできる仕組みもあるため、痛みや肌へのダメージを最小限に抑えることができます。
これらは大きなメリットに感じますが、懸念を抱く点もあります。それは、そもそも毛包においてバルジ領域がどこからどこまでなのか組織学的に正確に同定されていないという現実があります。
バルジ領域とは?
バルジ領域とは、発毛に必要な細胞、および細胞間シグナルを蓄えておく場所と考えられおており、バルジ領域が残存すると、せっかく脱毛してもまたムダ毛が生えてしまうと言われています。
反対にバルジ領域を完全に破壊すれば、これまでのレーザー脱毛のマイナス点を払拭出来るという発想に基づいて開発されたのが、メディオスターNeXTだと言えるでしょう。
しかし、バルジ領域は立毛筋下から細胞間シグナルが産生されている事は実証されていますが、毛乳頭のどこまでが受容体なのか、シグナルの産生部位がどこまでなのか、はっきりとは解明されていません。筆者は植毛手術において移植毛の採取の際にバルジ領域と考えられている部位を損傷した毛包を頭部の完全脱毛部に移植手術したところ、半年後に頭髪の再生を認めた経験があります。存在する場所が特定できていないため、現段階では、バルジ領域をターゲットとした脱毛の効果について完全な確約はできないと考えてます。
もしバルジ領域のみ選択的に確実に破壊する事ができれば最強の脱毛機と言えますが、バルジ領域が破壊された指標が施術者が判断できない欠点があります。レーザー脱毛施術では出力設定が最も大切ですので他覚的、自覚的に照射効果のエンドポイントを判断できない事も大きな懸念です。
今後の脱毛効果のデータに期待しています。
アリオン(アレキサンドライトレーザー)
イスラエルのアルマレーザーズ社(Alma Lasers)のアリオンは、アレキサンドライトレーザーを搭載した脱毛機械です。毛包をターゲットにしている一般的なタイプの脱毛機械ですが、特徴はパルス幅の微調整ができることです。パルス幅は、照射時間と関係があり、人それぞれに異なる肌色や毛質などの状態に応じて最適に調節することで、肌へのダメージを抑えることができます。
患者さんそれぞれにベストな選択ができるということは、脱毛効果や安全性の向上に寄与します。もともとアレキサンドライトレーザーは効果が高い反面、痛みが強くなる傾向がありますが、搭載機にはたいてい冷却装置が付いているほか、アリオンは照射スピードが通常の脱毛機械よりも早いため短時間で施術が可能です。アレキサンドライトレーザーには美肌効果もあると言われているので、それも嬉しいメリットです。
クールグライド、ジェネシス(ヤグレーザー)
アメリカで誕生したキュテラ社(CUTERA)は、ヤグレーザーを搭載したマシンとしてクールグライドとジェネシスを提供しています。ヤグレーザーの利用価値は脱毛だけにとどまらず、毛細血管拡張症の治療やレーザーフェイシャルにも用いられています。
とくにジェネシスでは、肌から照射口を浮かせた空中照射によって真皮層のコラーゲンを活性化して美肌にする効果があります。もちろん、ヤグレーザー搭載の脱毛機として、地黒肌の脱毛や太い毛の脱毛にも高い効果を発揮します。
エリート(ハイブリッド型)
エリートはアメリカのサイノシュア社(Cynosure)の開発したマシンで、アレキサンドライトレーザーとヤグレーザー両方を搭載した複合脱毛機械です。同じハイブリッド型のマシンでは、アメリカのキャンデラ社製のジェントルマックスプロが有名ですが、エリートのほうが安価なラインに位置づけられています。
ハイブリッド型のメリットは、広い範囲に照射したいときはアレキサンドライト、やや濃い産毛や色素沈着がある場所はヤグ、というふうに使い分けができることです。
エリートには、レーザー照射による痛みを緩和するために冷却装置が付いています。欠点としてあげられるのは、照射スピードがあまり早くないこと。エリートには、エリートプラス、エリートMPXといった後続機もあります。
進化した脱毛機械は患者さんにもメリットがある
以上のように、脱毛機械にはさまざまな種類がありますが、どのマシンが一番多くのクリニックで採用されているかといえば、やはりライトシェアデュエットとジェントルシリーズになります。これらのマシンは世界中で高いシェアを誇っており、脱毛効果と安全性についても十分な実績があります。とくにジェントルシリーズでは、従来のジェントルレーズとジェントルヤグの2台のハイブリットであり進化版のジェントルマックスプロが注目されています。
最新型になると、価格は1台1千万円は下らず、数千万円する場合もあります。そのため、かなり旧型の脱毛機械を使い続けているクリニックも少なくありませんが、新しい機械には患者さんにもメリットのある工夫が施されていることが多いのです。クリニックを訪れた際は、脱毛機の種類にも注目してみてください。